汚部屋という状態に表れた、母子の不自然な関係性。周囲からはわかりづらい圧力となって、子どもの価値観を歪めていきます。
慣れって怖いです。子どもの頃から異常な環境に置かれると、それがおかしいとすら気付けなくなったりも。
気付け無いということは、自分にも可能性があるわけで。人や世間との比較で、自分の立ち位置を知ることは大切ですね。
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東大卒作家による半自伝漫画
「東大入って自分だけ幸せになろうだなんて、ママ許さないからね!」
7年間壊れたままの自宅トイレ。包丁やまな板はゴキブリの通り道。そんな家にやがて「パパは来なく」なり、私は美しいママとふたり暮らしに。
センター試験前は極寒の部屋で、折りたたんだ布団を机代わりに受験勉強。ママが望むから東大に入った。
…じゃあ私は? 本当はどうしたかったのか。私はずっと…ただただ「普通の生活」をしてみたかった――。
東大卒作家の半自伝的、毒親との共依存ものがたり。
あらすじより
ゾッとしながら読み始めましたが、最後は救われて読み終わります。
完全なコミックエッセイではなく半自伝となっている理由は、”ママ”の言葉は著者の想像で補完されているからでしょうか。
“ママ”のセリフが怖い
毒親さん特有の、子どもを呪いで縛り付けるような言葉が繰り出されます。
漫画として読んでいると第三者の視点で「それはおかしい」と気付けますが、当事者になると「自分が悪いんだ」って思ってしまうことがあります。
わかりやすい暴力や暴言だけではなく、真綿で包んだような虐待。
この漫画を読むことで、似たような環境にいる方が逃げ出すきっかけになりますように。
著者へのインタビューから
著者のハミ山クリニカさんへのインタビューからの言葉をご紹介します。
「自分の顔って毎日見てるから変化に気づけないじゃないですか? それと一緒で、あまりに自然に汚れていったから、家が汚部屋になっているってなかなか気づかなかったんですよね」
ガスの検針で職員が家に来たときなどは、職員に見える手前の場所だけを片付けた。片付けると言っても、例えば玄関に散らかる靴をゴミ袋に入れて奥の部屋に押し込むだけだ。
「ガスの検針が終わったら、荷物は戻すつもりなんです。でも結局は片付けず、そのまま放置されました。そうして気づいたら奥の部屋は天井近くまでゴミがたまってしまい使えなくなってしまいました。そしてゴミはあふれ、家中に汚れが広がっていきました」
「汚部屋そだちの東大生」描いた彼女の壮絶半生 | 「非会社員」の知られざる稼ぎ方 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
汚部屋ができていく過程が垣間見えるお話しです。私も元汚部屋(ここまでではなかったけれど)なので、散らかってる状態に気付けなくなったことがありました。
ゴミ袋に入れて奥の部屋に押し込む方法が汚部屋のスタートでしょうか。その場しのぎの片付けをすると一見問題が目に入らなくなるので、一層根深い問題になっていくんですよね。
自分のネガティブな部分を見るのはつらいことではありますが、そこを見つめなければ解決には向かえないのだと感じました。
——お母様は良く見られたいという気持ちが強かったのに、部屋が散らかっていることは気にならなかったんですね。
父が家に出入りしていた中学生の頃までは家もきれいだったし、料理もしていたんです。でも、父と母との関係が悪化して家に来なくなったことをきっかけに、どんどん部屋が汚くなっていきました。外に出るときはきれいにメイクもするし、おしゃれもしていたけれど、家の中は他者評価に関係ない場所だったから荒れる一方でした。
汚部屋で育った東大卒作家「毒親」との20年。自立した今も抱える不安…(ハミ山 クリニカ) | FRaU
他者評価で生きる危険性を感じさせてくださるエピソードでした。
軸を自分の中に持っていないと、自分にはどうにもできない変化によって暮らしが崩れてしまいます。
行く学校や会社、身につける服や靴、付き合う友人や先生。自分の価値観や哲学を持っていれば、外部からの圧力がかかっても後悔しない生き方ができるのではないでしょうか。
どんな人におすすめしたいか
- 汚部屋の方
- 毒親さんとの関係にお悩みの方
- 歪んだ人間関係に囚われてる方
汚部屋に暮らしていると、見慣れてしまって異常さに気づかなくなります。漫画の描写を見ることで「うちっておかしいかも」と気づく可能性があります。
毒親さんとの問題を抱えている方にとっては、離れようという意志を後押ししてくれるかもしれません。著者は東大というスペシャルな肩書があるので他人事のように思える場合もあるかもしれませんが、解決に導いたのは『外部との人間関係』が大きいはず。これはどんな学歴の方でも脱出の糸口になるはず。
あとは歪んだ人間関係に陥ってる方。この本は『汚部屋』がキーワードにはなっていますが、歪んだ人間関係というのが根底にあるテーマだと思います。ご夫婦間やママ友などと違和感のある関係をお持ちの方は、読むことで「やっぱりおかしい!なんとかしないと」と一歩踏み出すきっかけになるかもしれません。
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