ちょっぴり大人なお金の使い方
項目 財産管理
エッセイ⑱ <半径5メートルを越えてみた>
その日私は、ここ数年続けていた薬治療をやっと終えることが出来て、ご機嫌だった。
たまーに都会の駅前などで『国境なき医師団』というテントやノボリを見ることはあった。
国境なき医師団【Medecins Sans Frontieres】略してMSF。私が生まれた年にフランスで設立。1999年にはノーベル平和賞を受賞。
長男の親友が高校時代に、この国境なき医師団に入ることを目標としている、と話しているのを聞いたことがあって、若いのに志がカッコイイなぁ、、、と思っていた。
私の住む所から一番近い都会に出掛けていたその日、たまたまこのノボリが目に入ってチラっと見てしまった。
どんな子が活躍しているのだろう、と少し興味があった。
テント近くにいた日本人離れしたちょっと東南アジアを感じさせる若い男性と目が合った。
彼はイソムラくん(仮名)と名乗り、国境なき医師団のお仕事をし始めて数ヶ月なのだと話し始めた。
純朴そうなその出で立ちから、この子だったら通りゆく人の足を止められるだろう、と上の人たちが送り込んだんだろうな、と思いながら、息子と同じ年のイソムラくんの話を聞いた。
国境なき医師団とは、世界で紛争や災害があった時、次の日には駆けつけるボランティア団体。
次の日に紛争地や被災地に駆けつける為には、国からの援助は貰うことが出来ないので、このような活動から資金を得ているのだと教えて貰った。
2022年MSFに支援している日本人は、41万8122人
一般個人寄付が91.0%、一般法人寄付7.4%
99.9%は民間からの寄付収入でまかなっている。
そういえば今年始めの能登半島地震の時、次の日には駆けつけてくれようとした台湾の救助隊を、政府が?お断りした、とのことで、波紋が広がった、、、というニュースを思い出した。
国の判断を仰いでいると、必要な時に必要なものを届けるのに時間がかかりすぎる。
国にはすぐには動けないしがらみがあるからか。
なるほど!
と、どんどん話に引き込まれていった。
その日私はご機嫌だったので(私はだいたいご機嫌なのだが)声をかけられた段階で、少しは募金をするつもりでいた。
昨年のやりたいことリストにも「機会があれば募金をする」というのもあった。
しかし、、、
イソムラくんの話を聞いていくと、※毎月数千円の寄付を続けるシステムなのだと言う。
そうかぁ。。。
今日だけじゃないのか。。。
という事は、ここで銀行の口座番号とかクレジット番号を記入するのか。。。
五十歳を過ぎるまで、「自分は自分の半径5メートルの人へ、してもらった事のお礼をしなくてはいけないから」という体のいい言い訳で、ろくに募金もしてこなかった。
過去に自分がした少しまとまった額の募金を、全部思い出せてしまう。
意識、かなり低め。
「うっ、どうしよう、、、(>_<)」
ちょっと後ずさりしたい気持ちになっていた。
その時ふと思った。
ここ暫く確かドル預金がお金を稼いでいたな。
つみたてNISAも今はプラスだったはず。
私にとってこれらで増えているお金は、元々は私のお金ではなかった「あぶく銭」のようなものだと思っていた。
ならば、これらが誰かのお役にたてたなら、なんだか気持ちも晴れやかになりそうだぞ♪と思えてきて、しばらくの間寄付をすることにした。
私の金融リテラシーの無さは、以前のブログ『お金の苦手、ちょっとだけ手放しませんか?』でも書いているとおりなのだが、、、
エンディングノートに向き合うようになってからは、自分のお金の管理くらいは人並みに出来るようになっていると自負している。
少し前の私なら間違いなく色んな意味で無理~ってなって「ホントごめんなさ~い!!」とその場を立ち去っていただろう。
わずかに空が高くなったような気持ちのよさと、それでも、クレジットカードの番号とか教えちゃって大丈夫だったかな、という不安や疑いももちつつ、私の寄付は始まった。
円高になった時、はたして私は寄付を続けられるだろうか。
その時の自分にひそかに期待している。
※国境なき医師団公式サイトから、その都度任意の金額寄付という方法もあります。