レナ蔵 憧れの場所へ
項目 残したい記憶
エッセイ㉑ <夢が叶うまで>
私が少し本を読めるようになったのは、前回のお話し(本の思い出A面とB面)にもあるように二十歳くらいのこと。
20代後半から30代中頃までは、子供達が一日20冊の絵本の読み聞かせをせがむので、私は日に日に音読が上手くなった。
ついでにコテコテの関西弁も修正して、子供たちが小学生になったらお洒落なカフェで働くぞ!という新たな目標ももちつつ、「標準語音読」に興じていた。
絵本の調達も兼ねて毎週図書館に通うようになったことで、本へのハードルがどんどん下がって行った経緯がある。
そして、今ここに一冊の本がある。
心と頭が軽くなる 週はじめの新習慣
「月曜瞑想」
この本の著者さんは、以前に何度かこのガイドブックジャーニーにもご登場していただいている、伊藤東凌さん。
私の眠りたい場所ナンバーワン候補、京都最古の禅寺「建仁寺塔頭・両足院」の副住職さんだ。
初夏の静かな雨降る昼下がり、このお寺で、私は東凌さんにお会いした。
会っていただけると決まった時は、「どんなご褒美なんだろう」と少し自分の人生が怖くなった。
それくらい嬉しかった。
繋いでくださったエリサさんには感謝しかない。
私は毎朝、Voicyやインスタグラムで東凌さんのお言葉を噛みしめている。
お話ししたい事は山のようにあるけれど、初対面、憧れの場所で憧れの方を目の前にしたら、ただただ「お会いできて嬉しいです~」「夢みたいです~」とファンの集いみたいになってしまう( ;∀;)
イメージするだけで焦った。
限られた時間、多忙を極められている東凌さんのお時間をいただくということを真剣に考えた時、もっとしっかり東凌さんについて知っておきたいと思った。
そこで初めて、「そうだ、ご著書はないのか?」と思い立った。
遅い。。。
お会いするその日まで一週間しかないではないか。
即アマゾンで購入、一度目は超特急で読んで、二度目はマーカーで忘れたくない言葉にチェックを入れながら、丁寧に読んだ。
今私はMe活ワークというワークショップをオンラインで開催している。
エンディングノートを書く時に現れる自分に向き合うというハードルに、丁寧に寄り添うというコンセプトのワークショップだ。
ここでは参加者さんに課題に合わせた事前アンケートにお答えいただき、それを元にお一人ずつお話しをお聴きしていく。
私はワーク中、お話しの中からポイントを選び取り、お悩みであったり不安であったりを別の視点や具体的なアイディアでお返しすることがワークの価値だと思っていた。
しかし、この書籍「月曜瞑想」には真逆の視点が書かれてあった。
そうだ、こたえはみんなの中にある。
今まさに私が向き合うためのお話しが、この中にはあった。
本との出会いは、少しスピリチュアルなものを感じてしまう。
人の悩みはほぼ人にあると言われている。
コミュニケーションを磨くことが出来たら、人生ごと大きく変えていくことが出来るのかもしれない。
この「月曜瞑想」も瞑想を日常にわかりやすく落としこみながら、主体的に生きる術が書かれている。
そして最終目標は、このコミュニケーションを整えていく、というところに行きつく。
今この本に出会えて、良かった。
東凌さんにお会いしたこの日、Blue Bottle Coffee Truck が建仁寺に登場していて、建仁寺塔頭・西来院内で珈琲が飲めるというイベントのおまけまで付いていた。
当日、約束の時間より早く着いた私とhibiyaスタッフのひろたんは、こちらでまずコーヒーをいただいた。
雨に濡れたお庭の絵画のような新緑を眺めながら、大好きなコーヒーを飲むひろたんは、
「ただ呼吸しているだけでいい」と言い、
静かに涙を流していた。
彼女の純粋でしなやかな心をあらわすようなエピソードだと思う。
これぞ、飲む瞑想?
彼女はこのコーヒーの味を忘れないだろう。
私はそんな彼女の横顔を見ながら、この11ヶ月の間に自分に起こった出来事を、胸がいっぱいになりながら思い出していた。
そのあとの東凌さんとの時間を、今はまだ言語化するのが難しい。
ただ、毎日お聴きしているその柔らかいお声と、昔からの友人だったかしら?と錯覚するくらいの軽やかな優しい視線でお迎えくださったということ。
「凄いひとは凄みをださない」ということを知った。
本は有難い。私をいろんな所へ連れて行ってくれる。
『静坐』
東凌さんにいただいた言葉。
「月曜瞑想」を読みながら、私は今朝も瞑想のお稽古をする。